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GHファンフィクションサイト「白日夢ーまひるにみるゆめ」のblog。 更新記録、突発sssなど
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暫く更新がなくてすみませんー。
ゴミ箱漁ってたらこんなのが出てきましたので。
はっきり言ってあほです。
しかしもう少し短くできなかったのか自分。

KISS FOR YOUR EYES


 軽やかなノックの音とほぼ同時に、ドアが開かれた。

「…ったく」
 呆れと、怒りを僅かに含んだ声は久しぶりに聞いた気がする。


 カチャリ、と手元に置かれたカップの音も。

——ああ。

 一週間と言う、僅かではあるが永く感じた彼女の不在。
 それでも日常は当たり前に過ぎていた、そう感じていたのは錯覚だったと、思い知らさ
れた。

 それでもモニターに視線を向けていると。

 頬を温かな手が包み、軽く上むかされて視界が陰る。
 まず、左瞼の上に。
 続いて、右瞼の上に。
 最後は眉間に。

 軽い、それでも温もりの残る柔らかな口付けの感触が。

 目を開けば、
 怒った表情の彼女がいた。
「……なんだ」
「あのね。これは酷使されて可哀相な、あんたの両目といつも皺だらけにされる眉間への
労りなの。
…自分の身体なんだから、もうちょっと労ってあげなよね」
「戻ってきた早々小言か」
 条件反射で自分の口から出た言葉に、一瞬我ながら不快感を覚えた。

 言いたかったのは、告げたかったのはこんな言葉ではなく。

 だが、
「居なかった事には気付いてたんだ?」
 彼女は何処か安心したように言う。

「4日間。松崎さんと原さんで旅行に行ってたんだろう」
「うん。…ただいま」
「……お帰り」
 足元に跪づいた彼女の頬を軽く指でなぞりながら告げる。
 僕がそう告げたのがよほど意外だったのか、一瞬軽く目を瞠った。
「ただいまっ」

 輝く笑顔が返って来る。
 それから、一瞬だけ、柔らかな口付けが、僕の唇に。
「これは、ちょっと寂しかったあたしの口にご褒美、かな」
「……」
 照れたようにそう告げて顔を背け、立ち上がる。
 その腕を捕え、そのまま抱き寄せた。
「…僕には、ないのか。…土産」
 耳元へ吐息と共に告げれば、一瞬体を竦めた癖に、
「お土産はありませんっ。リンさんから聞いたけど、私が居ない間ずーっと不摂生な生活してたんでしょ?せめて今日くらいはゆっくり休んで。ご飯は作りに行くから」

 肩に手をついて立ち上がろうとする身体を更に抱きしめる。
「なら」
 先程の余韻が残る唇に、まずは軽く。
「前払いで」
「はぁ!?」

 抗議をしようと叫びかけたその隙に、そのまま奥を貧る。
 力が抜けた身体が僕に委ねられ、腕が背中に回される。
 言葉ではない、全身で伝わる感情にただ、二人で溺れていく。



「と、止めなくていいんでっしゃろか」
「……」
「……」
 僅かに開いた所長室からばっちり聞こえるやりとりに、真砂子は朱く染まった頬を押さえ、松崎は痒みを堪えるように自分の両腕を摩りながら、それでも沈黙の海に沈んでいる。

 安原はこの場にたまたま居合わせてしまった神父の不運に僅かな同情を覚えたものの、答える気にはなれなかった。

 それよりも。

 ここ数日の上司が不摂生な生活を続けていたことを、彼女に告げ口したのがばれてしまい。
 僅かながらもその彼が機嫌を損ねてしまっただろうその報復が、やがて——資料室に篭っている彼に成されることは明白で。

 これは流石に助け舟を出さないといつか自分にも皺寄せが来るだろうと、思考回路を働かせた。


 結論。

 三十六計なんとやら——認めたくないが、今一番最適なのはこの戦術だろう。

 真砂子はフリーズしてしまっているし、松崎は全身砂糖の浴び過ぎで蕁麻疹になり、動けないでいる。ジョンはオロオロしてるだけだ。

 とにかく彼等をこの場から脱出させないと。

 さて、どうしようか、とまずはとりあえず立ち上がりかけた。

 からん、とこの場にそぐわない暢気な声が響いた。
「やほー、ムスメ達は帰ってるかいー??」

「……」
「……」
「……」

「……お久しぶりですね、滝川さん」
 よりにもよってこのタイミング。
 なんでわざわざ来たんですかと些か理不尽な怒りを自覚しながらも、声に滲ませずにはいられなかった。
 それで漸く、
「おろ。なんだなんだー?元気ないな、お前ら」
 場の雰囲気に気付いたらしい。
 それでもいつもの定位置に着こうと腰を降ろしかけて、
「あり?麻衣はどしたー?」
 目当ての少女が不在な事にも漸く気付いた、その時。

「ナルのおたんこなすーーっ!!」
 賑やかな声と共に完全に扉が開かれ、少女が飛び出して来た。


——あああああ。
 胸中で安原が天を仰ぐ。

「……麻衣?」
 滝川が呆然と問い掛ける。
 その声に、少女の顔色は更に真っ赤に染まった。
「ぼぼぼぼーさん、ひ、久しぶりだね元気しし、してた?」
 乱れた言葉以上に乱れた衣服を片手で直しながら、彼女はこちらではなくどこか斜めに視線をさまよわせていた。

 もう片手は何故か首筋を押さえている。
「アイスコーヒー、切らしちゃったからいい今買ってくるね、ちょっと待って?」
 尋ねながらも視線は相変わらず遠くに向かい、足は早くも玄関へと向いている。
「……」
そんな彼女の様子に滝川はただ涙を流している。

「麻衣」
 毅然としていて、それでもどこか焦った呼び掛けは真砂子だった。
「あたくしは、おいとまいたしますわね。仕事ですの」
「え、帰って来たばかりなのに…?」
「僕も、教会へ戻ります」「あたしも帰るわね。早くこのお土産を渡しに行かないと…」
「え?え?…みんな??」
 三々五々立ち上がったメンバーを彼女はただおろおろと見渡す。

「では僕は駅まで皆さんをお送りしますね」

 安原までが逃亡を謀り、滝川は漸く硬直から開放されて、
「麻衣、おま、おま、ナルにナニされたんだぁぁっ!?」
 と、彼女の肩をつかんで叫んでしまったもんだから——見なくてもいいものを、見せられてしまった…。

「ぼ、ぼーさんっっ」
 落ち着いて、と言いたいのだろうが肩を掴まれ揺さ振られて——。

「……麻衣…それはなんだ…」
 滝川の目に映るのは、白い肌に浮かび上がる、ほのかな鬱血痕。

「あ、え、え…」
 ますます動揺する彼女の前に、滝川はへたりこんだ。
「そうか……麻衣は……オトナになっちまったんだなぁ…」
 否定するわけではなく、麻衣はただ顔を背けた。

「あら。あんたって案外諦めがいいのね」
 コートを羽織りながら松崎が言うと、
「…覚悟はしてたさ…」
 へろへろと立ち上がり、そして、
「くぅ〜、こうなったら一発殴らせろっ」
 そのままの勢いで所長室に駆け込もうとしたので、周りは流石に皆必死で止めに入った。

「……何事ですか」
 そうこうしている内に、資料室の主が顔を出した。

「リン!おま、お前なぁっっ、監督不行き届きだぞーっっ!!」
 泣きながら叫ぶ滝川の様子に、リンの顔が青ざめる。
「あの坊ちゃんに責任取らせろー!!よくも、よくもかわいい俺のムスメを……」
 さめざめと泣き始めた滝川の様子に、リンは無言で踵を返した。

「え?あの、ぼーさん?それに…リンさんも」
 麻衣は乱れた服を整え、不思議そうに問い掛ける。
「……麻衣…?」
 やや冷静になったのか、真砂子が問い掛ける。

「——ナルに、何をされてましたの…??」
 う、と麻衣は赤くなって言葉に詰まった。

 綾子は楽しそうににやにやとしているが、いつの間にかジョンと安原はいなくなっていた。

「あー、いや、あの………」
 真っ赤になりながら、小声で麻衣は先程の一部始終を語った。

 ちょっとした悪戯をしたら、ナルから嫌がらせを受けたと。
 今まで顔にキスした事はあったが、肩や首にされた事はなく、ナルからの嫌がらせに違いないと——。

「もー、こんなに痕残っちゃってさぁ。わざわざこんな変態みたいなマネすることないじゃん、ナルってば、本当に怒ったのかなぁ……」

「……………麻衣」
 何処か重々しさを感じさせる口調で綾子は告げる。
「あんた今日はナルんち行くんでしょ?」
「え?…そのつもりだったけど…帰るよ、なんか悪いもん」
「何言ってるの、今夜はちゃんとナルの家に行って、ご飯作って、食べさせてきなさい」
——そしてそのままあんたも食べられちゃいなさい、と、真砂子には綾子の心の声が聞こえてしまった気がした…。

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