GHファンフィクションサイト「白日夢ーまひるにみるゆめ」のblog。
更新記録、突発sssなど
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お馬鹿sss。
うちで同日に千葉と富山と新潟の新米を頂いたので。
宜しければ続きからどうぞ。
うちで同日に千葉と富山と新潟の新米を頂いたので。
宜しければ続きからどうぞ。
久しぶりに良く晴れた土曜日。
何となく早めに出た。
リンも不在なので、久しぶりに自分で事務所を開ける。
こんな日は、彼女もいつもより早めに来るだろう。僕の姿を見て、驚きながらも喜んでくれるだろうと。
所長室に籠もり、仕事を始める。メールを確認すると本部から急ぎの仕事も入っていたので取りかかると、意外に時間がかかってしまった。
そして。
いつもより少し遅い時間、軽いノックが響いた。
それは彼女ではなく。
「所長、お早うございます。お茶お持ちしました」
「…はい」
「それで、谷山さんなんですが。先ほど連絡がありまして、今日は用事があるのでお休みさせてください、だそうです」
「そうですか」
昨日は何も言っていなかったから急用なのだろう。
それにしても、事務所の電話に連絡をしたのだろうが僕にはメールもなかったのが不可解で、気に食わなかった。
「では所長、今日一日は僕のお茶で我慢してくださいね」
含みある言葉にやや不快感を覚えたが、それとは別に
「安原さん。先ほどデータベースに置いた新しいファイルですが、本部からの依頼になります。日本語への翻訳を今週中にお願いします、とのことです」
手元のパソコンを操作しながら示すと、
「…今週中って、明日までですか」
安原さんにしては珍しく引きつった表情を浮かべた。
「はい。向こうの時間で明日中に、とのことです」
「了解しました」
何とか表情を引き締め、彼は立ち去る。再び室内は静寂に包まれた。
安原さんに依頼した仕事関連でこちらもそれなりに忙しい。論文が終わっていて本当に良かったと思う。
リンがいれば尚助かったが、仕方ない。
あれがいれば、猫の手位にはなっただろうが…。
「ナル、お疲れ様~」
思考の中の幻が、突然現れたようだった。
「…今日は休みだったんじゃないのか」
「あ、大丈夫大丈夫。用事済んだから。というより、ちょっと出れない?休憩してないでしょ」
言われて時計を見ればもう1時過ぎ。
彼女に引かれるまま所長室を出ると、そこにはいつものメンバーが揃っていて、しかも何か食べ物の匂いがしていた。
「素晴らしいですわ、麻衣!」
「千葉も捨てたもんじゃないわね」
「富山のも大変いけますです」
「いやいややはり新潟だろ?」
「ノリオに同じくvでもみな最高ですね」
何か口々に褒めたたえながら、皆一心に何かを頬張っていた。
「リンさんが居ないのが残念だけど、ナルも食べて?」
そう言われてソファにつかされ、目の前に並べられたのは白い物体。
「形は悪いけど、本当に美味しいから!左から梅、昆布、葱味噌、野沢菜です。梅は新潟ので、昆布と葱味噌は千葉、野沢菜は富山
だよ」
「…なんなんだ」
「オニギリです」
4つの物体は不格好ながら、何となく昔見た記憶があった。確か調査中松崎さんが作っていたのと似てなくもないが…。
「所謂愛妻弁当ってやつ?麻衣が頑張って作って来たのよ。食べてやりなさい」
松崎さんが紙の丼に入れた味噌汁を差し出しながら言う。
「あ、あああ愛妻弁当って!なわけないじゃんついでだよついで!」
「私たちの分は別の人が握ってくださったのでしょう?」
「そうなのか、ナル交換しろ!」
いきなりぼーさんが詰め寄ってきたが、
「だめだよぼーさんのは鮭入ってるから。ナル食べられないもん」
麻衣があっさり却下する。
「これを作ってて休んでたのか」
「や、あの…すみません所長」
麻衣が隣に座って言う。
「昨日さ、下宿先の子たちがね_」
麻衣の下宿先には地方から来ている学生も多い。 毎年この時期は各地の食材が種種とりどり、彼女たちの実家や親戚から送られてくるという。
昨日は富山、新潟、千葉から同時に10キロの米袋が送られて来たそうだ。
「みんな自分とこの米が一番美味しいって言い張ってて。じゃあ今日は新米祭りにして食べ比べてみようって…近所の食堂が調理場貸してくれてね、いっきに炊いてみたの」
「ちょっと待て。…30キロだろ?一度にか?」
ぼーさんが言うと、
「や。そこまでじゃないって。あ、でもね…結局どれも美味しいし、せっかくだから新米だし炊きたてだし、最高に美味しいうちに食べちゃお うって。それで結局殆ど炊いたかな?で、みんなにお裾分け。それでも残ったのは冷凍して食べる分だけ電子レンジで温めれば美味しいからさ」
「…秋どすなぁ」
良くわからない感想を漏らしたのはジョンだが、
「そ!食欲の秋、芸術の秋、味覚の秋なの!」
嬉しげに麻衣は叫んだが、食欲と味覚は区別する必要があるのか疑問を感じざるを得ない。
「だからね、ナルも美味しいうちに食べて?」
笑顔で勧められ、手をのばす。形はともかく、彼女が想いを込めて作った___。
『あー、崩れた!』
『谷山、手に水つけすぎ』
『あ、いーや。これ昆布だしナルの分にしよ』
『…え?』
『麻衣ちゃん、それ彼氏のにするんかい?』
『彼氏なんかじゃないって。上司。だって食事に興味ない人だもん。なんだっていいんだよ』
『…その『ナル』さんに同情します、私』
『あ、これきれいに出来たー。じゃ、綾子たちの分にしよ』
『…せめてナルさんにあげる分はキスでもしてあげたら良いじゃない』
『え、やだよ気持ち悪い』
『……』
『あでも、日頃の感謝は込めてるよ?一応あいじょー?』
『一応ってなんだ、一応って』
「……」
黙々と食べて進めるごとに彼女たちの会話が聞こえる。
食材が良いからだろう、味は恐らく美味だったとは感じたが、味覚よりも別のことが気になって仕方ない。
が。
「お味噌汁は綾子が差し入れしてくれたのー」
嬉しそうに笑うのは麻衣だけで、安原さんやぼーさんたちは何か感じたのか、沈黙している。
全て食べ終え、
「…ご馳走様」
と箸をおくと。
「え、ナルがご馳走さまって!感激だよ初めて聞いたーっ」
はしゃぐ麻衣に向かって笑みを浮かべる。
「…僕も麻衣の気持ちにきっちり謝意は示さないとな」
「え?謝意?ってお礼?や、別に良いって」
流石に野生の勘
がようやく働いたか、腰がひけていた。何時の間にか、松崎さんも原さんもぼーさんもいないが、丁度良いのが逃げ遅れていた。
「ジョン。この後時間あるか」
「…はいです」
「バイトを頼みます。時給にいつもより色を付けるので」
「…はい?」
「麻衣もだ」
「え。うん、はじめからそのつもりだったし」
殊勝なことを言いながら麻衣は立ち上がった。これから片付けるらしい。
「麻衣」
その背中に声をかける。
「今夜は帰さないからな」
途端、周囲は凍りついたが。
「うぇ、そんなにあるの!?」
麻衣の声がそれを破り。
安原さんとジョンは倒れかけた。
ある意味それは正しいけれど。
結局それは夜中までかかり。予定より早く終わったが、終わる頃にはソファには安原さんとジョン、麻衣が転がっていた。
「確かに、帰さなかったがな」
それは本来別の意味だったが。
朝食用にと用意されたおにぎりを手に取った。
__ごめんね。有難う。
温かな気持ちが伝わってくる。
なら今はこれでいい。
今は彼女の気持ちを大切にしようと、静かな歓びを噛み締めた。
何となく早めに出た。
リンも不在なので、久しぶりに自分で事務所を開ける。
こんな日は、彼女もいつもより早めに来るだろう。僕の姿を見て、驚きながらも喜んでくれるだろうと。
所長室に籠もり、仕事を始める。メールを確認すると本部から急ぎの仕事も入っていたので取りかかると、意外に時間がかかってしまった。
そして。
いつもより少し遅い時間、軽いノックが響いた。
それは彼女ではなく。
「所長、お早うございます。お茶お持ちしました」
「…はい」
「それで、谷山さんなんですが。先ほど連絡がありまして、今日は用事があるのでお休みさせてください、だそうです」
「そうですか」
昨日は何も言っていなかったから急用なのだろう。
それにしても、事務所の電話に連絡をしたのだろうが僕にはメールもなかったのが不可解で、気に食わなかった。
「では所長、今日一日は僕のお茶で我慢してくださいね」
含みある言葉にやや不快感を覚えたが、それとは別に
「安原さん。先ほどデータベースに置いた新しいファイルですが、本部からの依頼になります。日本語への翻訳を今週中にお願いします、とのことです」
手元のパソコンを操作しながら示すと、
「…今週中って、明日までですか」
安原さんにしては珍しく引きつった表情を浮かべた。
「はい。向こうの時間で明日中に、とのことです」
「了解しました」
何とか表情を引き締め、彼は立ち去る。再び室内は静寂に包まれた。
安原さんに依頼した仕事関連でこちらもそれなりに忙しい。論文が終わっていて本当に良かったと思う。
リンがいれば尚助かったが、仕方ない。
あれがいれば、猫の手位にはなっただろうが…。
「ナル、お疲れ様~」
思考の中の幻が、突然現れたようだった。
「…今日は休みだったんじゃないのか」
「あ、大丈夫大丈夫。用事済んだから。というより、ちょっと出れない?休憩してないでしょ」
言われて時計を見ればもう1時過ぎ。
彼女に引かれるまま所長室を出ると、そこにはいつものメンバーが揃っていて、しかも何か食べ物の匂いがしていた。
「素晴らしいですわ、麻衣!」
「千葉も捨てたもんじゃないわね」
「富山のも大変いけますです」
「いやいややはり新潟だろ?」
「ノリオに同じくvでもみな最高ですね」
何か口々に褒めたたえながら、皆一心に何かを頬張っていた。
「リンさんが居ないのが残念だけど、ナルも食べて?」
そう言われてソファにつかされ、目の前に並べられたのは白い物体。
「形は悪いけど、本当に美味しいから!左から梅、昆布、葱味噌、野沢菜です。梅は新潟ので、昆布と葱味噌は千葉、野沢菜は富山
だよ」
「…なんなんだ」
「オニギリです」
4つの物体は不格好ながら、何となく昔見た記憶があった。確か調査中松崎さんが作っていたのと似てなくもないが…。
「所謂愛妻弁当ってやつ?麻衣が頑張って作って来たのよ。食べてやりなさい」
松崎さんが紙の丼に入れた味噌汁を差し出しながら言う。
「あ、あああ愛妻弁当って!なわけないじゃんついでだよついで!」
「私たちの分は別の人が握ってくださったのでしょう?」
「そうなのか、ナル交換しろ!」
いきなりぼーさんが詰め寄ってきたが、
「だめだよぼーさんのは鮭入ってるから。ナル食べられないもん」
麻衣があっさり却下する。
「これを作ってて休んでたのか」
「や、あの…すみません所長」
麻衣が隣に座って言う。
「昨日さ、下宿先の子たちがね_」
麻衣の下宿先には地方から来ている学生も多い。 毎年この時期は各地の食材が種種とりどり、彼女たちの実家や親戚から送られてくるという。
昨日は富山、新潟、千葉から同時に10キロの米袋が送られて来たそうだ。
「みんな自分とこの米が一番美味しいって言い張ってて。じゃあ今日は新米祭りにして食べ比べてみようって…近所の食堂が調理場貸してくれてね、いっきに炊いてみたの」
「ちょっと待て。…30キロだろ?一度にか?」
ぼーさんが言うと、
「や。そこまでじゃないって。あ、でもね…結局どれも美味しいし、せっかくだから新米だし炊きたてだし、最高に美味しいうちに食べちゃお うって。それで結局殆ど炊いたかな?で、みんなにお裾分け。それでも残ったのは冷凍して食べる分だけ電子レンジで温めれば美味しいからさ」
「…秋どすなぁ」
良くわからない感想を漏らしたのはジョンだが、
「そ!食欲の秋、芸術の秋、味覚の秋なの!」
嬉しげに麻衣は叫んだが、食欲と味覚は区別する必要があるのか疑問を感じざるを得ない。
「だからね、ナルも美味しいうちに食べて?」
笑顔で勧められ、手をのばす。形はともかく、彼女が想いを込めて作った___。
『あー、崩れた!』
『谷山、手に水つけすぎ』
『あ、いーや。これ昆布だしナルの分にしよ』
『…え?』
『麻衣ちゃん、それ彼氏のにするんかい?』
『彼氏なんかじゃないって。上司。だって食事に興味ない人だもん。なんだっていいんだよ』
『…その『ナル』さんに同情します、私』
『あ、これきれいに出来たー。じゃ、綾子たちの分にしよ』
『…せめてナルさんにあげる分はキスでもしてあげたら良いじゃない』
『え、やだよ気持ち悪い』
『……』
『あでも、日頃の感謝は込めてるよ?一応あいじょー?』
『一応ってなんだ、一応って』
「……」
黙々と食べて進めるごとに彼女たちの会話が聞こえる。
食材が良いからだろう、味は恐らく美味だったとは感じたが、味覚よりも別のことが気になって仕方ない。
が。
「お味噌汁は綾子が差し入れしてくれたのー」
嬉しそうに笑うのは麻衣だけで、安原さんやぼーさんたちは何か感じたのか、沈黙している。
全て食べ終え、
「…ご馳走様」
と箸をおくと。
「え、ナルがご馳走さまって!感激だよ初めて聞いたーっ」
はしゃぐ麻衣に向かって笑みを浮かべる。
「…僕も麻衣の気持ちにきっちり謝意は示さないとな」
「え?謝意?ってお礼?や、別に良いって」
流石に野生の勘
がようやく働いたか、腰がひけていた。何時の間にか、松崎さんも原さんもぼーさんもいないが、丁度良いのが逃げ遅れていた。
「ジョン。この後時間あるか」
「…はいです」
「バイトを頼みます。時給にいつもより色を付けるので」
「…はい?」
「麻衣もだ」
「え。うん、はじめからそのつもりだったし」
殊勝なことを言いながら麻衣は立ち上がった。これから片付けるらしい。
「麻衣」
その背中に声をかける。
「今夜は帰さないからな」
途端、周囲は凍りついたが。
「うぇ、そんなにあるの!?」
麻衣の声がそれを破り。
安原さんとジョンは倒れかけた。
ある意味それは正しいけれど。
結局それは夜中までかかり。予定より早く終わったが、終わる頃にはソファには安原さんとジョン、麻衣が転がっていた。
「確かに、帰さなかったがな」
それは本来別の意味だったが。
朝食用にと用意されたおにぎりを手に取った。
__ごめんね。有難う。
温かな気持ちが伝わってくる。
なら今はこれでいい。
今は彼女の気持ちを大切にしようと、静かな歓びを噛み締めた。
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