GHファンフィクションサイト「白日夢ーまひるにみるゆめ」のblog。
更新記録、突発sssなど
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
何度目か忘れるくらいの再掲載。
ネタバレな彼へのバースデイプレゼントその1。
原作既読の方のみお読み下さい。
ネタバレな彼へのバースデイプレゼントその1。
原作既読の方のみお読み下さい。
———————はじめは、しろいやみだ、と思った。
だけど。
感じるのは、ぬくもり。
紛れも無い、暖かさ。
そして、穏やかに吹き抜ける、風。
ああ。音楽が聞こえる。
子守唄のような、優しい音楽が。
眩しさに目を瞬くと、視界いっぱいに広がるのは花畑。
名も知らぬ、白い花が咲き乱れ、花びらが散り急ぎ、世界を白く染め上げている。
—————わぁぁぁ。
楽しげに、子供達が駆けて行く。
その表情には先ほどまでの、苦痛は微塵も無い。
ただ、穏やかに、幸せに満ちて。
数十人の子供達は時折転げ、じゃれあいながら、楽しげに走り回っている。
そして、一人、また一人とその花の向こうに駆けて行く。
一人が去り際、振り返って手を振った。
「お姉ちゃん、ばいばい!」
「——ばいばい」
何処からか声が響いて、そこへ視線を向けると。
光のように白い衣服を纏った少女が立っていた。
いや。
もう、彼女は『少女』ではない。
一人の、女性。年齢も、そして、その内に重ねられた物も。柔らかに、いつも笑みを浮かべていた表情はいっそう深く、鮮やかだ。
娘、ではなく慈母のように。
白い服、と思っていたのは彼女自身から溢れ出た光そのもの。
おそらく、この『場』を生み出したのは彼女自身。
白い花が咲き乱れるこの世界は、彼女の内なる世界自身。
あんなに大勢いた筈の子供達はみな、彼女の光に導かれて去って行った。安らいで、新しい世界へと旅立って行ったのだ。
そして、今、僕もまたここにいるという事は。
「ジーン?」
こちらが声をかけるよりも早く、彼女が僕に気付いた。
「やぁ。久しぶりだね、麻衣」
そう言うと、
「久しぶり…」
麻衣の方も微笑ってくれた。
「麻衣。頑張ったね」
彼女の正面に立った。もう身長は殆ど変わりない。目線の高さも、彼女の方が僅かに低いけれど。
「ジーンのお陰だよ。ありがとう」
言って、麻衣は目を伏せる。
彼女ももう、気付いている。
僕が。ここにいる事の意味を。
漸く、待ち望んでいたこの時が来たのだ。
言いたい事は、一杯あった。
伝えたい事も、ただ、他愛ないおしゃべりでも。
だけど。
言えなかった。
だから。
「———ありがとう、麻衣。…幸せに」
そう、笑顔で告げた。
「ジーン。…ありがとう…」
彼女は一生懸命、涙をこらえて笑おうとしていた。
なんだか、その表情がおかしくて、思わず、吹き出してしまった。
「ジーンっ!」
「ご、ごめ、ごめん…うぷぷぷ」
怒った顔も、やっぱり。
「うわ。もーなんで笑うかなっ!?」
「ごめん。麻衣が、可愛かったから」
それは、本心だったのだけれど。
光の中で、初めて見る彼女は今まで見たよりも、ずっと可愛い。
一瞬、麻衣は固まってから。
「もーっ。そういうとこ、ほんと双子だよねっ。意地悪っっ」
再び盛大に怒り出した。
「あ、ナルもそう言うのかな?」
「うんわ。んなこたぁ言わないけどさ、そういうからかい方はほんと一緒だよーっ」
「そう。でもね、麻衣。可愛いだけじゃなく、綺麗になったね」
「ジーーーーーッン!!」
やっぱり、かわいい。
くすくすと笑っていると、麻衣もつられて笑ってくれた。
「良かった」
「ジーン?」
麻衣の表情が固くなる。
「麻衣。笑って」
「……」
再び俯いた彼女を、宥めるように言葉を重ねる。
「また、会おうね」
「……」
「いつになるか、解らないけど。僕らは、ナルも、リンもまどかも。ルエラ、マーティン…。それから、僕があった事ない君たちの仲間にも、いつかまた、会えるよ」
「……」
「だから。笑顔を見せて」
おそるおそる、麻衣は顔を上げた。それから、目を瞬く。
綺麗な雫がこぼれて、落ちる。
「ジーン…」
「だからね。約束」
そう告げれば、麻衣は漸く笑みながら、頷いた。そして、小指を差し出す。
その手を取って、引き寄せた。
柔らかい躯を一瞬強く抱きしめ、素早く額に口付けた。
「え?」
「ナルには、内緒っ」
そう言って、僕もその向こうへ駆け出す。
瞬間、遥か遠くに麻衣の姿があった。
もう、戻れない。
戻りたいとも、思わない。
「麻衣。幸せに」
その声が届いたか、解らないけど。暖かな光の中へ、僕は一歩踏み出した……。
言いたい事は、いっぱいあった。
伝えたい事、知って欲しかった事も。
だけど。
言わなくて、良かった。
だって。
いつかまた。
会えるから——————————————。
さよならは、言わない。
だけど。
感じるのは、ぬくもり。
紛れも無い、暖かさ。
そして、穏やかに吹き抜ける、風。
ああ。音楽が聞こえる。
子守唄のような、優しい音楽が。
眩しさに目を瞬くと、視界いっぱいに広がるのは花畑。
名も知らぬ、白い花が咲き乱れ、花びらが散り急ぎ、世界を白く染め上げている。
—————わぁぁぁ。
楽しげに、子供達が駆けて行く。
その表情には先ほどまでの、苦痛は微塵も無い。
ただ、穏やかに、幸せに満ちて。
数十人の子供達は時折転げ、じゃれあいながら、楽しげに走り回っている。
そして、一人、また一人とその花の向こうに駆けて行く。
一人が去り際、振り返って手を振った。
「お姉ちゃん、ばいばい!」
「——ばいばい」
何処からか声が響いて、そこへ視線を向けると。
光のように白い衣服を纏った少女が立っていた。
いや。
もう、彼女は『少女』ではない。
一人の、女性。年齢も、そして、その内に重ねられた物も。柔らかに、いつも笑みを浮かべていた表情はいっそう深く、鮮やかだ。
娘、ではなく慈母のように。
白い服、と思っていたのは彼女自身から溢れ出た光そのもの。
おそらく、この『場』を生み出したのは彼女自身。
白い花が咲き乱れるこの世界は、彼女の内なる世界自身。
あんなに大勢いた筈の子供達はみな、彼女の光に導かれて去って行った。安らいで、新しい世界へと旅立って行ったのだ。
そして、今、僕もまたここにいるという事は。
「ジーン?」
こちらが声をかけるよりも早く、彼女が僕に気付いた。
「やぁ。久しぶりだね、麻衣」
そう言うと、
「久しぶり…」
麻衣の方も微笑ってくれた。
「麻衣。頑張ったね」
彼女の正面に立った。もう身長は殆ど変わりない。目線の高さも、彼女の方が僅かに低いけれど。
「ジーンのお陰だよ。ありがとう」
言って、麻衣は目を伏せる。
彼女ももう、気付いている。
僕が。ここにいる事の意味を。
漸く、待ち望んでいたこの時が来たのだ。
言いたい事は、一杯あった。
伝えたい事も、ただ、他愛ないおしゃべりでも。
だけど。
言えなかった。
だから。
「———ありがとう、麻衣。…幸せに」
そう、笑顔で告げた。
「ジーン。…ありがとう…」
彼女は一生懸命、涙をこらえて笑おうとしていた。
なんだか、その表情がおかしくて、思わず、吹き出してしまった。
「ジーンっ!」
「ご、ごめ、ごめん…うぷぷぷ」
怒った顔も、やっぱり。
「うわ。もーなんで笑うかなっ!?」
「ごめん。麻衣が、可愛かったから」
それは、本心だったのだけれど。
光の中で、初めて見る彼女は今まで見たよりも、ずっと可愛い。
一瞬、麻衣は固まってから。
「もーっ。そういうとこ、ほんと双子だよねっ。意地悪っっ」
再び盛大に怒り出した。
「あ、ナルもそう言うのかな?」
「うんわ。んなこたぁ言わないけどさ、そういうからかい方はほんと一緒だよーっ」
「そう。でもね、麻衣。可愛いだけじゃなく、綺麗になったね」
「ジーーーーーッン!!」
やっぱり、かわいい。
くすくすと笑っていると、麻衣もつられて笑ってくれた。
「良かった」
「ジーン?」
麻衣の表情が固くなる。
「麻衣。笑って」
「……」
再び俯いた彼女を、宥めるように言葉を重ねる。
「また、会おうね」
「……」
「いつになるか、解らないけど。僕らは、ナルも、リンもまどかも。ルエラ、マーティン…。それから、僕があった事ない君たちの仲間にも、いつかまた、会えるよ」
「……」
「だから。笑顔を見せて」
おそるおそる、麻衣は顔を上げた。それから、目を瞬く。
綺麗な雫がこぼれて、落ちる。
「ジーン…」
「だからね。約束」
そう告げれば、麻衣は漸く笑みながら、頷いた。そして、小指を差し出す。
その手を取って、引き寄せた。
柔らかい躯を一瞬強く抱きしめ、素早く額に口付けた。
「え?」
「ナルには、内緒っ」
そう言って、僕もその向こうへ駆け出す。
瞬間、遥か遠くに麻衣の姿があった。
もう、戻れない。
戻りたいとも、思わない。
「麻衣。幸せに」
その声が届いたか、解らないけど。暖かな光の中へ、僕は一歩踏み出した……。
言いたい事は、いっぱいあった。
伝えたい事、知って欲しかった事も。
だけど。
言わなくて、良かった。
だって。
いつかまた。
会えるから——————————————。
さよならは、言わない。
PR
この記事にコメントする